maaaaaaaam!!!!!!!!!

10/13(日)
マラソン大会当日、ホテルで落武者メイクを済ませスタート地点へ移動。
やはりアメリカでも落武者への視線が痛い。
そもそもこの大会だけでなく、海外の大会ではコスプレをしてマラソンをするという文化がない。
顔に多少のペイントをしてる人はいるが、いわゆるコスプレはまず居ない。
今回の大会でもぼく以外誰も居なかった。
なのでコスプレをしていると必然的に注目を浴びてしまう。
そんなこんなで早くスタート時間になってくれと思いながら待機。
友人と談笑しながら羞恥心を紛らした。
天気は曇り、気温は朝の時点で8℃、昼間も14℃くらいまでしか上がらず鹿児島の冬レベル。
そんな寒空の中、上半身裸の男が数人いた。

寒さで身を震わせているぼくからしたら信じられない光景だった。
スタート15分くらい前になるとスタート地点へのゲートが開きみんなが並びだした。
友人と別れ、何を言ってるかわからないアナウンスが聞こえるがとりあえず人の流れに従う。
すると周りの人がみんな反対方向を見始めたのでぼくも回れ右をした。
何かが始まる感じがしたと思ったら、誰かが歌を歌い始めた。
それは「星条旗(The Star-Spangled Banner)」、アメリカの国歌だった。
胸に手を当ててる人もいたり、何とも身の引き締まる思いがした。
日本でもこれは取り入れるべきだと強く思った。
気の入り方が全く違うからね。
いきなりではあるが、今回のマラソン大会での一番の思い出となった瞬間だった。
そして歌い終わるとみんなが手を叩きながらフォーフォー言っていた。
そしてまた振り返り、そのテンションマックスのままスタートした。
超ローカルかつ地元のボランティア団体が主催している規模の小さな大会で、参加者はかなり少なく1000人くらいとのことだった。
まさかわざわざ海外から参加する人がいるなんて思いもしなかっただろう。
目標タイムは鹿児島での練習を思い返すと、追い込んで走って3時間45分くらいだと思われたが、次の日はニューヨークへ移動し観光するための脚を残す必要があるので3時間55分前後とした。
1km計算だと5:20〜5:30/km。
しかし、テンションぶち上げ星条旗でスタートしたぼくは5:00/km前後で5kmまで走ってしまった。
その後周りのペースや自分の気持ちも落ち着いてきたのでペースを落とそうとしたが、どんなにスピードを緩めようと思っても中々下がらない。
どうやら気温と湿度が低いから軽く走ってるつもりでもスピードが出てしまうようだ。
もう流れに身を任せるしかないと思い、そのままのペースで走ることにした。
さて、とりあえず本題の落武者の論評に入ろう。
0か100かのどちらか、これが北アメリカ大陸での落武者評だった。
アメリカ人の気質と言ってもいいものに、自分の興味があるものには一気にブチ上がるが、興味が無いものには一切無関心なのだ。
そんなの日本人でも当たり前と思うかもしれないが、アメリカ人はかなり極端である。
落武者を見て「awesome!(やば!)」「 arrow!(矢が刺さってる!)」「 Judas!(マジかよ!)」など日本と変わりないコメントをたくさん言われた。
他にもいろいろ言われたが一番思い出に残ってるセリフを紹介しよう。
コース上でちびっ子たちが水をランナーに渡していた。
そこにトットコ落武者が走ってきて、落武者を見るなり「maaaaaaaam!!!!!!!!!(おかーーーさーーーーーーーーん!!!!!)」と走って消え去った。
これは日本、インドでもなかった珍しい光景で、大会中も大会後もずっと思い出し笑いする良い思い出の一つとなった。

走っていて気付いたことを書く。
日本では考えられないくらい女性の参加率が高いと感じた。
なおかつ、その女性たちが速いのだ。
日本だとスタートして5〜10kmまではぼくを追い抜いていき、大体25km以降で追い越されるのが定番だ。
そこに男女率の差はあまりない。
しかし、走れど走れど全然落ちてこないのだ。
女性だけではなく、比較的体重がある人や、ジムでメチャクチャ鍛えてるゴッツイ人なども速いのなんのと本当にビックリだった。
去年筋肉を付けたら走るのが遅くなったと思っていたが、ただ単に自分の鍛錬が足りなかっただけだと反省した。
マラソン参加男女比率は50/50
話を女性に戻す。
とにかく、女性の参加率が高いと感じた。
できる限り走りながら数えてみたが確かに半数だった。
日本で大体5:00/kmのペースで走ってたら汗臭い野郎共が大多数なのだが、周りを見渡すと良い香りの女性の方が多かったりした。
もしかしてぼくに好意があって周りに集まってるのかと勘違いをしたりしたが、どうやらそんなことはなかった。
これに関する考察があるので書いていく。

まず初めに端的になぜアメリカの女性のランナーが多いのかを書く。
「自分に余裕が有り、教育格差と、いい意味で周りを気にしない人が多いから。」
これを詳しく説明していく。
アメリカでは健康のために何かしらのスポーツをする人が多いことは周知の事実だ。
特にランニング人口はかなりの数ではないだろうか。
そしてマラソンというスポーツは体力や精神力だけでなく、生活力も安定してる人でないと中々取り組めないものである。
生活力とは自分が置かれてる環境や資金面のことである。
例えば、小さな子どもがいたり、仕事に余裕がないと走るなんて考えられない。
また走るだけだからお金がかからないと思うかもしれないが、意外とお金がかかる。
ランナーあるあるの一つに、走らない人から「何をキツい思いをして、お金を払ってまで走るのか理解できない。」とよく言われる。
そう思う気持ちは理解できる。
他にもウェア、靴、サブ的なものなど意外と揃えだすとキリがない。
ぼくは毎年ランニングシューズを一足買うのだが、普段履くスニーカーは10年以上同じものを使っている。
普段着でも数年に一度しか買うことはないが、ランニング系のものは毎年何かしら買っている。
意外とランニングにはお金がかかるのだ。
体力や精神力は説明する必要もないだろう。
走るとその二つは絶対に強化される。
「絶対」にである。
そういった条件が整った人が多い国ほど裕福なはずだ。
これはちゃんとしたデータを取ってないので確かなことではないが、いつか取ってみようと思う。
前述したが、アメリカは0か100の考えが強い。
健康に関することでも同じで、不健康な人は極端に不健康で、健康を意識してる人はとにかく健康にこだわる。
見た目で誰が見ても明らかにわかるレベルで極端だ。
基本的に健康な人たちは男性の場合、身体を鍛えて筋骨隆々の人が多く、女性の場合綺麗にシェイプアップされている。
逆に不健康な人に男女差はなく、とにかく太っており顔色が悪い。
海外でよく聞くのが、大企業の社長やキャリアが高い人ほど運動をしている。
当然と言えば当然なのかもしれない。
不健康そうな人から接客やプレゼンなどをされるより、健康そうな人からの方が何だか安心感や説得力を感じるのはぼくだけではないはずだ。
やはり見た目は大事だとぼくは思う。
教育方法の差もある。
日本の体育は競わせることを是とし、目の前の成績のために授業がある。
体育の長距離といったら我慢して苦しい思いをして走らなければならない。
そんなのよっぽど長距離が得意な人でない限り好きになることはない。
だから走ること(特に長距離)が嫌いな人が大多数なのだ。
欧米では将来社会に出たときのための運動として体育がある。
走ることで頭の整理、ストレス発散、アンガーコントロールなどができるようになることを教えるのだ。
そこには決して競争や苦しい思いを強要することはしない。
そもそも運動の種類によって得手不得手があるのが当たり前で、競わせることに何の価値もないというのが学校での教えにある。
もちろん競技会などはあるので、競う人は自らその世界に入り自らの意思で行う。
なので同じ走ることでも、目的が違うため大人になってからの運動への取り組みが苦ではないのだ。
これは大きな差を生んでいるだろうとぼくは考えている。
そんなバックグラウンドがある中で、日本人女性がランニング(運動)をしない大きな理由の一つとして「羞恥心」がある。
走ってる姿を他人、ましてや知り合いになどみられたくないのだ。
田舎に行けば行くほど世間が狭いため他人から見られることを考えたら走るなんてあり得ないのだ。
(運動をしたら良いということがわかっているにも関わらず!)
島国国家であるが故に、生まれた気質的なものなのだろう。
そんなどうでも良いことで、自分の健康や見た目を捨てるなんて馬鹿げているとぼくは強く思う。
そんなこんなの理由で、日本人女性が運動する人が少ないと考えている。
もちろんぼくのお勧めはランニングだが、走れとは言わないので何かしらの運動をすることを強くお勧めする。
落武者のゴール
さて、話が大幅に逸れたので戻そう。
落武者がアメリカを走ってる話だったか。
今回の大会での沿道からの声援の話をしよう。
アメリカの声援は質が桁違いである。
沿道の声援者は大体全員全力で応援してくれる。
それが落武者だからとか関係なく、ランナー全員に全力で応援してくれる。



とにかく「フォーーー!!!」がデフォ。
フォーの質が段違いで、声帯が切れるんじゃないかと思うくらいフォーフォー叫んでいる。
テレビやネットなどで見たことがあるかもしれないが、マジでずっと全力でフォーフォー言ってるからね。
ゴールする時なんてフォーがやばかった。
いやそもそもフォーってなんだよと思うかもしれないので、近日中に動画ができるのでそちらで確認してもらいたい。
日本のように真面目に走ってても応援者たちの反応は薄く、グッドポーズなど、こちらが何かしらのアクションをしたらより強い声援になったりした。
そこは日本との差が顕著だったと思う。
25km地点で「落武者〜!」という声が聞こえて突然の日本語にビックリしたが友人の応援の声だった。
そして38km地点くらいにその友人が移動していてハイタッチをした。
なんやかんやトットコハム太郎で走っていると遠くから大きなフォーフォーの声が聞こえてきた。
時計を見るとどうやらゴールが近いようだ。
アナウンサーが何かを言ってる声も聞こえてきた。
しかし、その声をかき消すほどの落武者へのフォーフォーが会場を包み込んだ。
両手を広げゲートをくぐり42kmのラン旅が終わりを迎えた。

脚の状態を確認しながら歩き、スタッフさんと今大会二度目のハイタッチをした時にゴールしたんだと実感した。
少し歩くとメダルを配っていた。
写真で確認できると思うが、このメダルはかなり良い感じだ。
これまでいろんな大会に出てメダルをもらってきたが、今までで1番良いメダルだ。
というか、これまではメダルをもらってもそんなに嬉しくなかったが、今回のこのメダルはかなり嬉しかった。


そんなこんなで結局最後までペースが崩れることなく、大体同じペースで完走した。
ラストスパートはしようと思えば出来たが、次の日にはニューヨークに移動して二日間観光しなければならなかったのでグッと堪えた。
もちろんきつくないといったら嘘になるが、いつもの大会後とは全然違う身体の状態だった。
メダルをもらい歩いていると友人が待ち構えていた。
労いの言葉をかけられ、二人に感謝の気持ちを伝えた。
他人の道楽に付き合ってもらっただけでなく、声援と動画を撮ってもらった。
本当に感謝してもしきれないほど、今でも感謝の気持ちでいっぱいだ。
ぼくはなんと恵まれた人なのだろうか。
メイクを落とし着替えを済ませ友人と再び合流し、会場を離れようかと思ったが、何やらみんなが何かを食べている。
どうやら完走後の給食があるようだ。
友人二人を置き去りに、自分だけもらって食べた。
42kmを走った後だからなのか、友人を差し置いて食べてる優越感からなのか、ここで食べたクラムチャウダーが今回の旅で一番美味しかった。
先程までの感謝の気持ちは何だったのかと自分を卑下しながらバクバク食べた。
もしかしたらワンチャン友人も食べれそうな気がしたので、そこにいたスタッフさんに聞いてみた。
そしたらなんと、「ランナーのサポーターだよね?もちろん食べて良いよ!」と快く快諾してくれたのだ。
日本ではまずあり得ないことに驚きつつも、気まずい雰囲気がなくなり友人たちと談笑しながら食べた。
細かい話だが一応給食がどんなだったかも書く。
まずは日本と同じようにバナナがあった。
その横にはリンゴが丸ごとあり、ドーナツ、地元のポテチが置いてあった。

これらは多分誰が食べても良い感じで配られていた。
少し離れた所に手を洗うところがあり、その先にクラムチャウダーのゾーンがあるのだが、6種類くらいと豊富に用意されていた。
スタッフさんにお願いすると指定した品を紙の器に注いでくれた。
多分だがおかわりも全然大丈夫だったと思う。
走り終わって汗冷えしてる身体に温かいスープがより美味しさを引き上げてくれた。
みんなが食べ終わり、会場を離れて再びバスに乗った。
睡眠不足と疲労から秒で寝て、起きたらボストンに着いていた。
友人宅まで歩いて帰った。
自分でも驚くほど脚が元気だった。
祝勝会ではないが無事の完走を祝い、また友人たちへの感謝の気持ちを新たに伝えながらお酒を飲み様々な話に花を咲かせた。
この日はみんな疲れていたこともあり、あまり飲まずに22時頃には就寝した。

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